2018年2月25日開催 英語「通訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.18 Friday
  • 13:52

2月25日(日)に行われた「通訳者・翻訳者への道」セミナー。第3部は、会議通訳者でありサイマル・アカデミーの講師も務める高畑美奈子先生が登壇されました。内容は、記憶に新しい平昌オリンピックでの通訳の仕事について。通訳者をめざす人にとっては関心の高い話題で、「オリンピックでの通訳に興味がある人パー」と呼び掛けると、参加者のうち約3分の1の手が挙がりました。ここでは当日の内容を一部紹介します。

 

第3部 英語「通訳者への道」

 

講師:高畑美奈子


○たかはた・みなこ 上智大学外国語学部英語学科卒業後、TBSに就職。報道および情報番組の記者として、外信部やNY支局勤務。退職後、サイマル・アカデミーを受講し卒業。現在フリーランスの通訳者。得意分野は外務省関連、労働関係、IR等。 

 

 

|「縁の下の力持ち」―オリンピックでの通訳の仕事について


オリンピックでの通訳の仕事というと、たとえば記者会見で有名選手の横について通訳をする姿を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。実際のところ、有名選手と仕事をする機会はほとんどないそうです。むしろそれ以外の大会準備や大会期間中の運営における通訳が多く、その部門はオリンピック全体で52種類にも及びます。たとえば、宿泊、放送サービス、交通、エネルギー、開閉会式、ドーピング検査、会場・インフラなど。通訳者はまさに競技の裏側を支える「縁の下の力持ち」といえます。

その各部門にて、会議(逐次通訳*/同時通訳*)や視察(ウィスパリング*/逐次通訳)、記者会見、レセプション、オブザーバープログラムなどの通訳を行います。今回の平昌オリンピックの期間中、高畑先生は現地でそのオブザーバープログラムの通訳に携わっていました。オブザーバープログラムとは、国際オリンピック委員会(IOC)が将来のオリンピック開催国や候補地の担当者に、その年の開催国が準備・運営している様子を実際に見てもらうプログラムです。

 

平昌オリンピックでのオブザーバープログラムは何か国もの担当者が同席することもあり、たとえば最初に韓国語→英語に訳し、それを別の通訳者が英語→日本語に訳すという「リレー通訳」の手法が用いられたそうです。屋内・屋外を問わない現場で、屋外の場合は川が凍るほどの寒さ。上下とも十分に着込み、聴診器のような形の簡易型通訳機材を使用しながら現地で奮闘する通訳者の方々の姿がスライドに映されていました。

 


 

 


*通訳の種類。たとえば「逐次通訳」は、話者がある程度まとめて話したものを整理して後から訳すこと。それぞれの通訳の種類について知りたい方はこちらをご覧ください。(サイマル・アカデミー コンテンツ「SIMUL CAFE」に移ります)

 

 

|日々の積み重ね


オリンピックでは、組織委員会から組織の名前やオリンピック独特の用語を説明した、100ページ近くにも及ぶ単語帳が通訳者に共有されるそうです。スポーツを始め、交通、エネルギー、医療など、部門の数だけジャンルも多岐に渡ります。にも関わらず、「たとえば来週どの分野を担当するのか、日にちが近付くまで分からない」ことに加え、「実際、その単語帳を持って会議に出席したとしても、その場で使うことはなかなか難しい」。それはあんまりでは、と思ってしまいますが、それでも最大限の準備をし、万全の態勢で臨むプロの仕事を痛感しました。

 

↑セミナー後に公開された、数十枚にも及ぶ高畑先生お手製の単語帳。

たくさんの参加者の方々が見て行かれました。

 

オリンピックに限らず、特定の分野に特化しないフリーランスの通訳者として活躍されている高畑先生の仕事内容は、普段からさまざまです。そのために、「日々アンテナを張り、勉強し続けることが大切」という言葉には説得力がありました。今回のセミナーでも事前に参加者の方々から質問をいただきましたが、中でも多かったのが「通訳者になるための勉強のコツ」について。これに対し、「実際はコツも近道もなく、とにかく毎日の積み重ねが大事。たとえば通勤・通学のとき、朝起きてから15分、就寝前の10分など、自分の生活に合わせて毎日学習し、続けること。」と回答しました。さらに、たとえばCNNを毎日観るとして、リアルタイムで観られない場合はポッドキャストで聞くなど、現代のツールを駆使した学習方法についても紹介していただき、「自分の生活に合わせた学習」の具体的な方法についても理解が深まりました。

 

 

明日の仕事が今日の続きならいいが、色々な分野の仕事があるので、今日は明日の分の勉強をしておかなければならず、毎日勉強が続いて行く。今通訳者になるための勉強を毎日続けらなければ、通訳者になってから続けることは難しい」。一見厳しい言葉のようですが、日々さまざまな仕事に携わり、オリンピックのような大舞台も影で支える姿を考えると、それほどの覚悟と努力が不可欠であることが伝わりました。

 

通訳者になる前は記者の仕事をしていた高畑先生ですが、通訳者になった今、仕事の醍醐味は「社会で起きていることと仕事が直結していること」と、「一方的に伝えるのではなく、言葉のキャッチボールの中に自分が介入していること」だそうです。通訳者になる前・なった後の厳しさと、国際社会における言語のかけ橋として活躍するやりがいを教えていただきました。

 

 

ご参加いただいた皆様、ありがとうございました嬉しい

2018年2月25日開催 中国語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:10

2月25日(日)に開催された「通訳者・翻訳者への道」。第2部は、中国語翻訳者であり、サイマル・アカデミーの講師も務める眦塚技卆萓犬登壇されました。近年の中国語翻訳のマーケット事情や、学習する上で大切なこと等についてお話ししていただきました。

 

 

第2部 中国語「翻訳者への道」

 

講師:眦塚技


たかだ・ゆうこ 大学卒業後、商社勤務を経て、中国語通訳・翻訳業に従事。サイマル・アカデミー中国語翻訳者養成コースコーディネーター。桜美林大学非常勤講師、法政大学兼任講師を務める一方、実務翻訳者の後進指導・育成に注力している。

 

 

「好き嫌いなし」のスタンスが大切


来日中国人増加に伴い、ここ5年ほどはインバウンド対応が多いというお話から始まりました。ショッピングモールのパンフレットをはじめ、すでに来日したことがある「リピーター」観光客をターゲットにした、すし作り体験着物着付け体験などの日本語から中国語への翻訳で、そのジャンルは多岐に渡ります。

 

さらに、中国の市場に目を向けた企業からの依頼で、企業ホームページ契約書会社案内などの翻訳も多く見られます。また、中国語から日本語への翻訳では、中国(特に台湾)のオンラインゲームの翻訳が増加の傾向にあるそうです。

 

一方、従来から変わらないジャンルは、技術系の文書学術論文会議の資料講演原稿保険法律関係など。セミナーの第1部で、英語翻訳者は自分の強みである専門分野を身につけて仕事をしていくというお話がありましたが、中国語翻訳では比較的マーケットが小さいためか、「好き嫌いしていてはやっていけない」。どのジャンルにも対応できるようにするため、学習段階から「好奇心を持って様々な分野に挑戦する姿勢が大切」です。

 

 

学習を生活の一部にする


では、ジャンルを問わずに対応できる力は、どのように習得すればよいのでしょうか。学習する上で大切なことについて、次のことを挙げられました。

 

1)原文を速く正しく読む。

2)特に母語の語彙や表現を豊かにする。

3)時間を意識しながら学習する。

 

1)については「最も基本的で最も大切」なこと。締切がある仕事のため、限られた時間の中で高いクオリティの訳文を仕上げるには必要不可欠といえるでしょう。2)の具体的な学習方法は、「原文を漫然と読むのではなく分析しながら読む」。翻訳は「通訳と同じくらい語彙力が必要」というお話もありましたが、原文を読む段階から常に「どう訳すか」を意識することが重要なのだと感じました。そして3)については、実は「翻訳者になってからも活きる」こと。締切や訳す分量、ジャンルを見て引き受けられる仕事かどうか素早く判断するために、普段から時間を意識しながら学習することが大切だそうです。「引き受けるかどうかを判断するのは自分」という言葉から、自分の力量を把握していなければできない仕事だということが伝わりました。

 

ここで、眦沈萓犬桓身で毎日実践されている学習方法についても紹介していただきました。

まずニュースを母語である日本語で読み、その後、関連記事を中国語でも読みます。「面白い・知っておきたい」と思った記事をプリントアウトして、原文を見ながら声に出して訳していくという方法。

 

声に出して読む理由としては、「書くより速い」ことに加え、「声に出して訳すと訳せないところが明白になり、自分を誤魔化せない」から。原文を一読する時、内容について「「大体分かる」ことと「全部訳せる」ことは全く異なる」というお話がありましたが、声に出すことでその分からない部分が明らかになるそうです。

 

学習は、「普段の生活に組み込む」ことが重要とのこと。意識して「何曜日に何を何時間やる」と決めたりせず、食事や洗顔のように当たり前のことにするのがコツのようです。学習者の皆様もぜひ試してみてください!

 

セミナーの後半には、当日配布した課題を使用してミニレッスンを実施。参加者の皆様が真剣にメモを取る姿が印象的でした。ご参加いただきありがとうございました!

 


参加者の方々からいただいた質問と、それに対する眦沈萓犬らの回答をいくつかピックアップしてご紹介します見る

 

Q. 最近はインターネット上で安価に依頼できる翻訳の仕事があるため、わざわざ学校に行って勉強をしなくても自称翻訳者として仕事ができるのではと想像してしまいます。学校へ行って勉強した方が翻訳者として活躍するための近道になるのでしょうか。

 

A. 翻訳者には資格がないため、余計にそう感じてしまうのだと思います。スクールでは、どのような訳が求められ、評価されるかがすぐに分かるため、一定のレベルがあれば半年でもいいので通学することをおすすめします。また、同じ志を持った人が周りにいるということはとても心強いですし、励みにもなります。

 

Q. 中日翻訳の方が得意なのですが、中日に限定して仕事をすることは可能でしょうか。

A. 可能です。ただし、学習は中日と日中どちらもやっておく必要があります。翻訳者は翻訳だけでなくチェッカーの仕事もあり、中国語ネイティブが日本語に訳したものをチェックするのは日本人なので、そういう時に中国語の表現について判断ができないと困るからです。サイマル・アカデミーでもその状況を想定して、日本語ネイティブのクラスでは、日訳と中訳どちらも同じバランスで学習します。

 

たくさんのご質問をありがとうございました女

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」対談 アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:05

第1部「翻訳者への道」の最後は、パート1、パート2に登壇された成瀬先生と長島先生の対談が行われました。トピックは、産業翻訳と出版翻訳の違いや、仕事をする上での年齢制限はあるのかなど。当日の内容を一部ご紹介します。
 

パート3:成瀬先生×長島先生 対談!産業翻訳と出版翻訳の魅力

 

 

長島:まずは、産業翻訳と出版翻訳の違いについて。受講生の方によく聞かれるんですよ、「自分はどっちに向いているのか」と。この質問を受けた時、成瀬先生はどのように答えられていますか?

 

成瀬:財務諸表をよく知らないある受講生が居て、授業の3回目くらいの時に、転科を勧めたことがありました。「あなたはとても文章のセンスがあるから、こっち(産業翻訳)じゃなくて、長島先生の方(出版翻訳)に行った方が伸びますよ」って言って。後から聞いたら、彼女はその時非常に腹が立ったそうです。「捨てられた」「見限られた」と思ったらしくて(笑)。そこから、こいつを見返してやろうと思ったそうです。1年猛勉強したら、財務諸表すらすら読めるようになってましたね。「先生、二度と眼鏡違いをしてはいけませんよ」と言われました。というわけで、正直どちらに向いているかは分からないですね。

 

長島:私は、成瀬先生がパート1で仰っていたように、「やる気次第」だと思うんですよね。どちらに向いているかというより、どちらに興味を持って本気で勉強できるかを考えて選んでいただきたい。たとえば、「私は金融大嫌いです、勉強する気ありません」という人。それは私なんですけど(笑)、産業翻訳のクラスに行っても、半年しか続かないでしょう。だって興味ないんですもの。だけれども、興味を持てるようだったら本気で勉強する。それなら、今は何も知識がなくても続くと思います。

 

成瀬:両方できるっていうスーパーマンもたまにいますね。

 

長島:いますね。実際サイマルで講師をしていますから、会いに来てください。あと、勉強を始める年齢に制限はあるか、いつまで現役を続けられるか。これに関してはどう思いますか?

 

成瀬年齢は関係ないですね。スキルに関して言えば、ぐんぐん若竹みたいに伸びる人や、少しずつ伸びる人など伸び方に差はありますが、間違いなく伸びます。一番困るのは、「1年で翻訳者になれますか?」という質問。そういう人もいるし、3年かかる人もいるし、それはその人次第ですね。

 

長島:いずれにしても、勉強を始める年齢に制限はないですよね。

 

成瀬:はい。実際、定年退職してからサイマルに通学する方は多いですね。

 

長島:多いですね。「定年退職して時間ができたので、かねてから興味があった翻訳を勉強したいと思って受講しました」という方。しかも、経験豊富、知識もあるから、早い方だと1年から1年半くらいでプロになる方もいますね。いつまで現役を続けられるかについてはどうですか。

 

成瀬:私は少なくとも90歳まではやるつもりです。今63歳なんですけど、駆け出しだと思っていて、75歳くらいがピークなのかなと。まだまだ勉強することが尽きないので。

 

長島はい、頑張ってください。

 

成瀬:なんでそんなに冷たいんですか(笑)?

 

長島:定年はないと思います。気力のある限りだと思います。体力も必要だと思いますけどね。

 

成瀬:そう、体力。体力は本当に使いますね。

 

長島パート2で触れた菊池光は、亡くなる直前の85歳まで現役でした。翻訳という仕事が生きがいだからできたんだと今は思います。

 

成瀬:何歳までという発想はいらないと思います。生きてる限り現役

 

長島:同感です。先程パート1でもありましたが、翻訳業の将来についてはどうでしょう。自動翻訳やAI、今後の需要はどうなるのか。ご心配されている方も多いと思います。そのあたりはどうですか?

 

成瀬:産業翻訳に関していえば、激変期です。人工知能を使った翻訳が8割、残りの2割が人間翻訳で、それはこれからも変わらないと思います。今の翻訳事業の7~8割はなくなるんでしょうね。本当にできる人だけが残っていく

 

長島:出版翻訳でいうと、自動翻訳は全く使われていません。ですから、10年、20年は仕事があると信じています。ただ、自動翻訳もこれからどんどん良くはなっていきますよね。そのときに、自動翻訳と同等の翻訳しかできない翻訳者は淘汰されると思います。だって、安くできますから。人間にしかできない「心の翻訳」ができる人だけが残る。ただそのためには、それだけの力をつけなくてはいけない。ということで、サイマルで勉強しましょう(笑)!

 

成瀬:今の翻訳者が圧倒的に弱いのは、日本語の文章力ですね。

 

長島:英語のレベルが高い人は増えているんですよね。それに反して、特に日本語の文章力が下がっているのは、受講生の課題の訳文を見ていても時折感じますね。

 

成瀬:魅力のある良い文章を書いていただきたい。産業翻訳にとってはマストです。

 

長島:たまに、自分は文章力がないから産業翻訳をやりたいという人がいますが、それは間違いです。ノンフィクションでも産業翻訳でも、文章力は必要です。今後さらにレベルの高い翻訳が求められることを考えると、文章力を磨くというのはこれからますます重要になってくると思います。

 

成瀬:産業翻訳では、日英翻訳のニーズも高いです。英語が書けるというのはとても大事な能力で、英語がきちんと書けると、日本語もそれにひっぱられるんですね。だから日英翻訳もこれから頑張ってください。英日、日英どちらもできないと、産業翻訳の場合は生き残っていけないと思います。

 

長島:ひとつ聞きたいことがあるんだけど、翻訳をしていて、一番うれしいことは?少し明るい話題にしたいと思って。

 

成瀬:それは・・なんだろう。やってること自体ハッピーというか。長島さんも言ったけど、好きなんですよね。だから苦しくても毎日楽しいというか。

 

長島:うん。そうよね。菊池先生のこんなエピソードがあって。80歳過ぎた頃に、早川書房の編集者から「先生次はこんな本です」って新しい原書を渡されたんですけど、その時先生が、わーいわーいって手を挙げて喜んだのを見て、びっくりしました。100冊も200冊も訳してきた人が、また新しい本を受け取って、手を挙げて喜ぶなんてと思ったんですが、それほど好きだったんでしょうね。私はというと、自分の訳した作品を読んだ人が、ぞっとしたり怖がったり楽しんだり笑ったり泣いたり、そういう風にしてるかもしれないと思うと、本当に嬉しくなります。特に小説翻訳だと夢みたいなところがあって、このシーンでもしかしたら泣いてくれてるかな、と想像しながら訳すのが楽しいですね。

 

成瀬:お互い「楽しい」って言い合ってますね(笑)。

 

長島:はい(笑)。とにかく、翻訳が好きということですね。

 


将来的にますます質の高い翻訳が求められることの現実と厳しさが伺えた一方で、本人次第で生涯翻訳者として仕事をしていく力を身につけられるということと、お2人の翻訳が好きだという気持ちが伝わった対談となりました。当日お越しいただいたみなさま、ありがとうございました!

 

2018年2月25日開催 英語「翻訳者への道」アフターレポート

  • 2018.05.09 Wednesday
  • 12:00

「通訳者・翻訳者への道」セミナーが、2月25日(日)に開催されました。今回はセミナー始まって以来初の3部構成。第1部では、産業翻訳者でありサイマル・アカデミーの講師を務める成瀬由紀雄先生と、出版翻訳者であり同じく講師の長島水際先生が登壇されました。ここでは、第1部の内容を紹介していきます。

 

第1部 英語「翻訳者への道」

 

パート1:産業翻訳者への道


講師:成瀬由紀雄


○なるせ・ゆきお 商社勤務、高校の英語教師、編集業務などを経て、フリーランスの産業翻訳者に。サイマル・インターナショナル、タイムインク、大日本印刷などのクライアントを経由して官公庁、企業、大学等から多種多様な翻訳・人材教育・英文出版業務等に従事。2002年からはサイマル・アカデミー産業翻訳者養成コース講師。

 

 

やる気次第で道は開ける


成瀬先生が講師を務める翻訳者養成コースの最大の目標は、「生涯を通じて翻訳の仕事ができる翻訳力を獲得すること」。翻訳エージェンシーに登録することが最終的なゴールではありません。そのため、登録したその日から仕事ができるようなプログラムを提供しています。例として、一つの英文からいくつもの訳文を考えるトレーニングが挙げられました。訳文の選択肢を広げることで、「価値の高い」訳文を生む可能性を高めることが目的です。修了生の中には、翻訳者としてデビュー後、翻訳力の基礎を磨くために再び受講している方も。「学習」と「実践」を意欲的に往復することで、翻訳者になった後も翻訳力を伸ばし続けることができます。

 

また、多くの方が懸念する、今後の機械翻訳による影響についてのお話もありました。先生は、「機械翻訳を利用した大量処理案件」と「人間の手による高度な案件」に分かれていくと予想。特に前者は「翻訳市場の大半を占めることになるのでは」と予測しています。しかし、人工知能の発達によって「言語情報処理としての翻訳」、すなわち英文和訳が編集されたような翻訳が増加したとしても、その文章の本質を捉えた「心と心をつなぐ翻訳」は人間にしかできません。「人間の心を人間に伝えることができるのは人間だけ」という言葉には、深く納得させられました。

 

機械翻訳の影響に限らず、他にも年齢や経験、専門的な知識がないこと等を気にして、翻訳者になることを思いとどまる方は多いのではないでしょうか。しかし、これまで先生が受け持ってきた受講生は、70歳を超える方文学部出身で財務諸表という言葉も知らなかった方主婦や子育て中の方など実にさまざま。いずれも猛勉強の末に翻訳者になった方々ですが、少なくとも翻訳者への道の入り口は、年齢も知識量も経歴も関係ありません。本人のやる気次第で道は開けるということを教えていただきました。

 

 

 

 

 

パート2:出版翻訳者への道


講師:長島水際


○ながしま・みぎわ サイマル・アカデミーを卒業後、サスペンス、ミステリーを中心に翻訳を行なっている。サイマル・アカデミー翻訳者養成コース出版翻訳講師。訳書:コーディ・マクファディン「暗闇」、「戦慄」、「傷痕」、ノーラ・ロバーツ「真昼の復讐者」他多数。

 

 

翻訳との出会いと翻訳者への道


長島先生はサイマル・アカデミー修了生。翻訳者になる前は、大学などで英語の講師をしていました。職場の同僚に誘われてサイマル・アカデミーに通学し始めましたが、その時はまだ翻訳者をめざしていたわけではなく、「勉強してみようかな」という気軽な気持ちだったそうです。

 

そんな中、クラスで最初の課題が出されました。アメリカの投資銀行のエコノミストについて書かれたノンフィクションの翻訳で、先生の苦手な分野でした。あまりリサーチをすることなく提出し、添削付きで返却された「誤訳だらけ」の自分の原稿と、高評価だったクラスメイトの原稿を見比べて「唖然とした」と言います。英語が得意だと思っていたのは勘違いだったということに、その時気づいたそうです。

 

その後、「クラスで1〜3番くらいの成績になれるまでは頑張ろう」と一念発起。平日は仕事、休日はアカデミーという忙しい日々を3年半送り、ついに小説の翻訳をする話を、当時の講師である菊池光先生から持ちかけられました。その時手がけた本のジャンルは、数年前から好んで読んでいたという「ドロドロ・おぞましい系のロマンス」。430ページほどの分量を、半年近くかけて訳しあげました。やがてその本が出版された時の喜びは今でも覚えていて、「書店を3〜4軒回って訳書が平積みされているのを見に行った」そうです。

 

プロになるまでの、仕事をしながら学習を続けた3年半について、「大変ではあったが、勉強していくにつれて読解力や表現力が少しずつ伸びていることが分かった。それと、サイマルに通学して学習することが生活の一部になっていた」と振り返りました。だから続けることができたのだそうです。最後に、ゼロから翻訳者への道を進んだ先生は、「経験や知識は、最初はなくても大丈夫。でも、最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない。」という言葉で締めくくり、学習を始めようか迷っている方の背中を押しました。

 

 

 

 


セミナー後に取った参加者のアンケートでは、「学習に対する姿勢の大切さに気づかされた」という声が多く見られました。年齢や経歴、そして今後の重要など、不安に思うことはあるかもしれませんが、「最初の一歩を踏み出さなければ何も始まらない」ということと、「やる気次第」で力をつけていくことで、その不安要素を取り除けるということが参加者の方々に届いた回となりました。

 

パート1とパート2をそれぞれお送りしましたが、最後のパート3はお二人の対談です!

その模様は次の記事にてご紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。

2017年8月26日(土)開催 『通訳者への道』アフターレポート

  • 2017.11.27 Monday
  • 17:48

2017年8月26日(土)に開催された、「通訳者への道」のアフターレポートをご紹介します。

登壇したのは、サイマル・インターナショナル専属通訳者兼サイマル・アカデミー通訳者養成コース講師の、池内尚郎さんです。「国際理解のファシリテーターをめざして」という副題のもと、実際の通訳現場の様子や、同時通訳をする上で大切なことについてお話くださいました。


池内 尚郎

上智大学外国語学部ロシア語学科で学ぶ。国際交流や国際政策に関わる仕事を経て、サイマル・アカデミーで学び会議通訳者に。政治・経済・文化・科学技術など、幅広い分野で活躍。現在は通訳者養成コースで会議通訳クラスを担当。

 

 

 

|実際の通訳現場


同時通訳*は専用のブースの中で行いますが、その環境は案件によって異なります。ブースが広く窓が大きい恵まれた環境だったヨーロッパ、反対にブースが小さかったインド、なぜかマイクや通訳機材を置く台が高いため、椅子を重ねて座らざるを得なかった中東、ブース自体がなく雑音を聞きながら通訳したスリランカなど、実際に出向かれた現場の写真を見せながら紹介していただきました。

 

中でも印象的だったのが、「Korean」「English」などのプレートが付いたブースが、ずらりと並ぶ一枚の写真。多言語の通訳が必要な現場では、言語毎に分かれたブースがいくつも設けられます。ひとつの発言がその場でさまざまな言語に通訳される現場を想像すると、不思議な感じがしました。

 

 

このように、ブース内で仕事をすることから見ても、通訳者は「目に見えず、聞こえるだけ」「裏方、黒子」と言われがちですが、通訳者こそ「国際理解のファシリテーターとしての自負を持って仕事ができる」職業だと池内先生は言います。そのエピソードとして、ある国連本部での仕事終わりに、日本代表団の方々が集まって記念写真を撮っている姿を収めた写真を紹介していただきました。「代表団の方々に、会議をやりきったと思ってもらえるような通訳ができたという達成感があった」と写真を撮った時のことを振り返られ、通訳者という仕事の醍醐味を見せていただいた瞬間でした。

 

* 話し手の発言を聞くのと同時に訳していく通訳のこと。通訳には同時通訳の他にも、ある程度発言がまとまった後に訳す「逐次通訳」や、通訳者が聞き手の耳元に囁きながら同時通訳をする「ウィスパリング」という形式があります。通訳の種類について詳しく知りたい方はこちらから。

 

|「単語ではなく意味を訳す」


通訳において重要なことは、「単語ではなく意味を訳す」ことだそうです。特に話者の発言にかぶせるようにして訳す「同時通訳」は、「分からない単語が出てきた時、意味を考える瞬間にはもう話が進んでしまう」というほど速いテンポで訳します。そのため、単語に気を取られず、話の内容を理解し、その意味を訳すのに重点を置くことが鍵となるようです。実際、ひとつの単語が分からなかったとしても、広い意味で理解していれば訳が出てくることはよくあるとのことでした。

 

また、同時通訳をする際は「言葉を節約」することが秘訣だとか。すなわち、短い文章で訳すということです。言葉を別の言語に訳すと長くなってしまうのが一般的ですが、聞き手にとっては言葉が短い方が分かりやすい。「意味を訳す」だけでも難易度の高い作業ですが、「聞き手がどれだけ理解しやすい訳であるかが重要」だと、訳を聞く側の立場にも立って仕事をされている姿勢がとても印象的でした。

 

 

資料に通訳現場の写真やユニークな画像が多く使われていたこともあってか、参加者の方々は常にスクリーンに注目されていました。こちらで紹介したトピックの他にも、AIと通訳者の今後や、通訳者という職業の歴史についてもお話していただき、内容の濃い1.5時間となりました。最後は"If you don't know where you are going, any road will get you there."という言葉を、「どこに行くかは分からないが、どこかにはたどり着く」という解釈で示し、結果がどうであれ努力は必ず無駄にならないと、学習に迷いを感じている方々にエールを送って締めくくられました。

 

第1部の「翻訳者への道」同様、こちらも参加者の方々からたくさんの質問が上がりました。

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

参加者の声

・通訳者とはどういう仕事なのかをより深く理解することができた。

・通訳者の実際のお話を伺えたため、今後の学習に役立てられそう。

・とても楽しいお話だった。これから通訳者を目指すにあたって、

励みになる内容だった。

 

 

 

2017年8月26日(土)開催 『翻訳者への道』アフターレポート

  • 2017.11.01 Wednesday
  • 14:54

2017年8月26日(土)に開催された、「翻訳者への道」のアフターレポートをご紹介します。
講師は現役産業翻訳者兼、サイマル・アカデミー翻訳者養成コースのクラスを受け持つ沢田陽子先生。普段携わっている案件や、翻訳者に必要な技術、質の良い翻訳についてお話していただきました。

 


沢田 陽子

津田塾大学卒、英ロンドンメトロポリタン大学院応用翻訳学修士課程修了。

英系証券会社、米系コンサルティング会社などに勤務後、実務翻訳者に。

現在はサイマル・インターナショナルの英日翻訳、英日・日英翻訳の校閲に従事している。

 

 

|アカデミー時代と現在の翻訳案件


サイマル・アカデミー出身の沢田先生。外資系企業に勤務していた頃に翻訳を任されることで興味を持ち、契約書関係の通信講座を受けたことが、最初の翻訳学習経験だったそうです。その後、もっと広範囲なビジネス文書を訳せるようになりたいという思いから、産業翻訳コースに通学しました。

 

在籍当時、ひとつの文書をクラス内で分担して訳す課題が出たときのこと。「クラスメイトにメールで質問を投げかけると夜中でも返信が来て、他の人も頑張っているから自分も頑張ろうと思えた」と、今でも付き合いのある仲間達と切磋琢磨して学んだ学校生活を振り返りました。

 

沢田先生含め、通学制を選んで良かったことを伺うと、「クラスメイトとの関わり」と答える卒業生は多くいます。お互いプロになってから、アカデミー時代の思い出を振り返ったり、仕事の相談をしたりする存在ができることは、大きな財産ですね男

 

卒業してサイマル・インターナショナルにフリーランス翻訳者として登録後、携わっている案件は、官公庁学術機関国際機関金融機関などの業界で、文書は刊行物報告書プレスリリース社内会議資料契約書など。印象的だったのが、パワーポイント資料を翻訳(英日)するときの意外な苦労。一見訳す量が少なくて楽なのではと思えますが、説明なしで専門用語や社内用語が多く使われているため、枚数が少ない割に時間がかかる汗そうで、リアルな現場の声を聞くことができました。

 

|良質な翻訳のために


産業翻訳のもっとも重要な点は、「何が言いたいのかを伝える」こと。「完成した文書を読んだ時、全体の筋が通っていて、内容が理解できるもの」が良質な翻訳と言えるそうです。では、そのためにどのような能力を身につける必要があるでしょうか。

 

以下4つのことを挙げました。

 

■高い英語読解力 ■専門知識 ■リサーチ能力 ■日本語に対する意識

 

まず英語の読解力を磨く方法としては、声に出して読むこと。目から入る情報と耳から入る情報は異なるため、難しい文章に当たったときは、声に出すことで文と文の繋がりがよりクリアに見えてくるそうです。

 

そして、専門知識リサーチ能力。専門分野がなければ、それをリサーチで補います。学習方法としては、ビジネスニュースを聞き、日経新聞を読むなどして、常に幅広い分野にアンテナを張っておくこと。特に新聞は素人向けに書かれていて理解しやすいため、日経新聞を読むことから始めてみるのをお薦めしていました。

 

最後に、日本語に対する意識とは、言葉の選択や句読点の位置、論理的な文章になっているかどうかに意識を向けること。ここでいう「言葉の選択」とは、文書の背景に合わせて適切な日本語を当てはめることを指します。「上昇」「拡大」「増加」など、同じ意味でも複数の意味を持つ"increase"という単語の訳を例に説明していただきました。

 

単語や文法の正確な意味や、原文通りの順番に訳すことを重視する英文和訳と、文書の背景によって訳す単語の順番を変えたり、適切な意味を選択したりしながら、内容が伝わりやすいことを重視する翻訳の違いについてもお話がありましたが、機械的に訳すだけでは成立しない翻訳の奥深さに触れることができました。

 

 

翻訳者となった今でも「日々勉強」と仰っていた沢田先生。「翻訳者に向いていない人」として、「思いやりのない人」を挙げていましたが、「伝えたい、理解しやすいものを作りたいという思いが翻訳には必要」と仰っていた姿が印象に残りました。作業が終わっても何度も何度も立ち止まり、より良い訳を探究する精神が良質な翻訳へと結びつくのだそうです。

 

セミナーの最後には参加者の方々からいくつも質問が上がり、活気に満ちた良い回となりましたぴかぴか

 

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。

 

 

聞き耳を立てる参加者の声見る

・翻訳で大切なポイントがわかった。

・プロとしての経験談が大変役に立った。

・翻訳の仕事内容、現状の説明が分かりやすかった。

 

 

2017年2月26日(日)開催 『中国語/通訳者への道』アフターレポート

  • 2017.04.04 Tuesday
  • 17:18

サイマル・アカデミーでは、定期的にセミナー「通訳者への道」「翻訳者への道」を開催しています。今回は2017年2月26日(日)に開催された『中国語/通訳者への道』のレポートをご紹介します!講師はサイマル・アカデミー中国語通訳者養成コース主任講師の塚本慶一先生。『40年余の通訳現場・教場の体験から』というテーマでお話しいただきました。

 

 

1947年中国生まれ。高校まで上海で教育を受ける。帰国後、東京外国語大学中国語学科を卒業。中国語通訳者・翻訳者として活躍する一方、日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)の参事役として日中ビジネス業務にかかわる。現在、北京大学大学院日中通訳翻訳研究センター名誉センター長をはじめ、日本並びに中国の大学・大学院にて後進の育成に当たっている。     塚本 慶一(中国語通訳者養成コース主任講師)

 

1947年中国生まれ。高校まで上海で教育を受ける。帰国後、東京外国語大学中国語学科を卒業。中国語通訳者・翻訳者として活躍する一方、日本輸出入銀行(現・国際協力銀行)の参事役として日中ビジネス業務にかかわる。現在、北京大学大学院日中通訳翻訳研究センター名誉センター長をはじめ、日本並びに中国の大学・大学院にて後進の育成に当たっている。     

 

 

1981年のコース設立当初からサイマル・アカデミーの中国語コースに携わってこられ、現在主任講師を務める塚本慶一先生。講師と通訳者両方の立場から、学習するにあたって重要な心構えや方法、また実践で大切にすべき要素について語っていただきました。

 

 

母語は「最大の武器」びっくり


「通訳者は言葉をただ訳せるだけでは不十分。通訳に必要な“背景知識”と相手に対しての“思いやり”を持って通訳することで初めて、真のコミュニケーターとしての役割を果たすことができる。」というお話から今回のセミナーは始まりました。中国語通訳者として活動するには、日本人なら中国語、中国人なら日本語のブラッシュアップは当たり前。通訳者は単に「中国語/日本語ができる」だけでは不十分で、まずは語学力の強化を図ることが大切です。

 

ですが今回、塚本先生のお話の中で、「母語は最大の武器」という印象的な言葉がありました。通訳というと外国語の語彙力や表現力の強化に重きを置くイメージですが、実は母語こそおろそかにしてはいけない。理由は、これが欠けてしまうと「微妙なニュアンスが訳せない」からだそうです。

 

母語だからといって、「ただ話せる、聞ける、書けるでは不十分」。通訳をする際外国語の方につられてしまい、ぎこちない訳になってしまわないよう、母語を「武器」とするべく日頃からブラッシュアップが必要であることを感じさせられました。

 

 

モチベーショングー


通訳者をめざして学習するにあたり、まず大切にすべきものはモチベーションだと語る塚本先生。「意欲と目的意識をしっかり持ち、やりがい、やる価値をしっかりと認識して取り組む」。通訳に限らず学びには挫折がつきものですが、何のために学習しているのかを常に頭に置くことで向上心を維持することが重要とのこと。通訳者はプロになってからも事前準備やスキル維持のために勉強し続ける仕事のため、学習者の方に限らずプロの方も、このお話はエールとなったのではないでしょうか。

 

さらに学習する環境にも触れ、その際「場」「友」「師」という3つの要素を挙げられました。まず「場」とは、一流の学習環境と実践的な授業を受ける場所。「友」とは、共に切磋琢磨しあう仲間。最後に「師」とは、追いつこう、最終的には追い越そうと努力する対象です。特に「師」について、追いつくだけでなく「追い越す」ために努力するという言葉は良い意味で緊張感があり、参加者の方々の学習意欲をかきたてたことと思います。

 

 

「中国語は短く、日本語は長い。」見る


言語の性質上、中国語を日本語に通訳する際、元の中国語の文章より日本語訳の方が言語の性質上長くなる。「会の最後の挨拶など、だらだら訳していたら訳し終える前に拍手が起こってしまう」と、実際の同時通訳の現場の様子を例に挙げられました。

 

しかし、通訳において「収まり」のみを気にするわけにはいきません。ではどうすればよいのかということで、「3サ」という言葉を用いて「正確」「分かりやす」「すばや」が通訳をする際心がけるべき3つの要素だと教えていただきました。

 

まず正確に訳すことは大前提として、相手に伝わるように訳す。さらにその場が自然でスムーズに進行するよう、的確な長さに収める。「3サ」を通して、通訳技術の本質が見えたお話でした。

 

 

 

 

セミナーは非常にアットホームな雰囲気で行われ、中には先生が執筆された本に直筆サイン鉛筆2をゲットしたラッキーな参加者の方もびっくりぴかぴか

セミナーの最後にご自身が40年間日中の懸け橋として誇りを持って通訳をしてきたことを振り返られましたが、長い間通訳者として、そして講師としてご活躍されてきた塚本先生だからからこそ、強い意志を持って学習を続けるという重みが伝わったことが印象的でした。

 

女参加者の声男

・前向きに勉強を続けようと思った。

・目標とそれへの学習行程が明確になった。

・中国語通訳の勉強の仕方、現状など聞けてとてもためになった。

 

2017年2月26日(日)開催 『英語/通訳者への道』アフターレポート

  • 2017.03.30 Thursday
  • 17:56

サイマル・アカデミーでは、定期的にセミナー「通訳者への道」「翻訳者への道」を開催しています。今回は2017年2月26日(日)に開催された『英語/通訳者への道』のレポートをご紹介します!講師はサイマル・インターナショナル専属通訳者の勝木一郎さん。

『通訳者をめざすことを決めてから今日まで』というテーマでお話しいただきました。

 

 

 勝木 一郎(サイマル・インターナショナル 専属通訳者)

 

国際基督教大学卒。慶應義塾大学大学院、米国ミネソタ大学大学院を修了後、ワシントンDCで自然保護団体のインターン、国会議員秘書を経てサイマル・アカデミー入学。在学中からサイマル・ビジネスコミュニケーションズを 通して社内通訳として勤務し、現在はサイマル・インターナショナル専属通訳者として活躍中。

 

 

 議員秘書から40代で通訳者に転身された勝木一郎さん。派遣を経てフリーランスとしての最初の仕事は、アメリカから来日した企業家のスピーチの通訳だったそうです。今回のセミナーでは、現役通訳者という立場から、実際の通訳の現場や事前準備のことについて語っていただきました。

 

多種多様な仕事と現場のニーズ読書


勝木さんがこれまで担当した通訳業務は、外国人が出席する披露宴のスピーチ、他国の人々に向けて日本の制度や政策について説明する研修インターナショナルスクールに通う子供の3者面談など、現場によって扱う内容はさまざま。

 

また、現場での訳出のニーズはクライアントの英語レベルの差にもよるそうです。たとえば、英語を聞くほうは問題ないが話す時にサポートが欲しい

またその逆。あるいは、始めから全て訳して欲しい、必要な時だけ訳してほしい、など、通訳を必要とするお客様によってニーズは全く異なります。

 

特にこの「必要な時だけ」という要望は、

「必要な時」がどの部分を指すのか第三者には分からない。

という理由から一番難しいとおっしゃり、このリアルな現場の声に会場では頷いている方もいらっしゃいました。

 

「とにかくやるしかない」メンタルびっくり


終盤に行われたQ&Aの際にも上がった「メンタルの保ち方」

勝木さんは、「通訳をしてうまくいかなった時は全部自分のせいにしていた」と、通訳者になりたての頃のご自身を振り返られましたが、

今では「悩むときはあとで悩む。あまり余計なことは考えず、

とにかくやるしかない」という気持ちで毎回臨まれているそうです。

 

そのきっかけとなったのが、ある会議でのこと。会議中、終始怒っている方がいて、勝木さんはそれをずっと自分の訳のせいだと思い込んでいました。

 

ところが実のところ、その方は通訳を聞いて理解した「会議の内容そのもの」に対して怒っていたことが後になってわかり、訳のせいどころか、むしろ内容がよく分かったからこそ、内容に集中していただいた姿をはじめて目の当たりにした経験があるそうです。

 

訳している最中は周りの反応は気になるものの、気にしていたら集中できない。いかなる状況においても仕事としてやりきらなければならないという、通訳者のリアルな心情が垣間見られたお話でした。

 

PPAPは知っておきたかったあせあせ


「通訳の仕事は扱う内容の幅が広いからこそ、事前に準備してから臨むことが重要だが、それだけではなく自分から収集する情報以外のことも吸収する必要がある」。その理由の一つとして、能と狂言に関するセミナーの通訳をした際のエピソードを明かしていただきました。

 

世間はPPAPが話題になっていた頃。勝木さんは、動画は目にしてはいたものの、あまり関心が持てず流してしまっていました。ところが、狂言師の方がセミナーの中で、PPAPのパフォーマンスを例に狂言の説明をしはじめ、リンゴとペンを

両手でくっつける仕草を、勝木さんが知らずに“Combine楽しい!”と訳すと、

狂言師の方に「そこCombineじゃないよびっくり!」とその場で笑って

突っ込まれる、ということがあったそうです。

 

会場はそのやりとりも含めて和気あいあいとした雰囲気でしたが、勝木さんは目の前の通訳案件の事前準備ばかりに集中して他のことは後回しにするのではなく、「自然と目・耳に入ってくるものはやはり確認しておかなければならない」と思われたそうです。

 

現場では何が役立つか分からない。そのために、どのようなジャンルの情報もないがしろにせず、知識として蓄えておくことが重要というお話でした。

 

 

 

最後は、40代で通訳者となった経歴を踏まえられてか、「自分の役割だと思っている」としながら、「通訳者になるのに年齢は関係ない」と締めくくられました。現役通訳者としてやりがいと苦悩を感じながらも、常に良い通訳を目指したいという思いが真摯に伝わってきたことが印象的でした。また勝木さんの人柄が影響し、会場は笑いが起こる堅苦しさゼロのアットホームな雰囲気でした。

 

 

聞き耳を立てる参加者の声見る

・通訳の仕事の大変さと面白さがよく理解できた。

・身近な経験をもとに話をされていて、とても良かった。勇気づけられた。

・具体的でリアルな通訳者の仕事の様子や本音を知ることができたため、通訳という仕事が身近に思えた。

・自分の方法論や体験を人間味あふれる語り口で話され、聞きやすかった。 

 

2016年3月6日開催 『通訳者・翻訳者への道in大阪』 アフターレポート

  • 2016.11.04 Friday
  • 18:19

大阪校のコースリニューアルを記念した特別企画として、大阪で初めて「通訳者への道・翻訳者への道」を開催しました。第2部は、長年、サイマル・アカデミー大阪校で日英翻訳コースを教えていただいている野口ジュディー先生の「翻訳者への道」です。

 

野口先生(サイズ調整済).png講師:野口ジュディー
サイマル・アカデミー大阪校で日英翻訳コース講師。ハワイ出身。
化学で学士を取得し、来日後、専門英語教育に興味を持つ。教育学修士課程、応用言語学博士課程修了。フリーで翻訳業をスタート後、理系論文の添削もしながら、現在は神戸学院大学グローバルコミュニケーション学部長を務める。

 

野口先生はハワイご出身の英語ネイティブ。セミナーは英語で行なわれ、第1部同様、サイマル・アカデミー修了生による同時通訳(英→日)付きでした。
今回は、先生の研究テーマであるESP(English for Specific Purposes)について、また、サイマルの授業でも教えているESPアプローチや、Corpusを駆使した翻訳についてお話ししていただきました。


ESP(English for Specific Purposes)とは
初めて耳にする方がほとんどかと思いますが、ESPとは「特定の目的のための英語」のことを指し、機械翻訳の指針にもなっているものです。例えば、大学病院に勤務している医師を例に挙げると、医師は論文や学会発表の資料を読み書きし、また日々進歩する医療・治療法を研究する研究者のネットワークの一員でもあります。そこにはひとつの共通目的をもった集団(ディスコース・コミュニティ)で使われる特定の英語が存在します。この「特定の英語」がESPです。

 

また、ひとつのESPの中にも、コミュニケーションの目的・用途によって様々なGenre(例えば、学術論文、取扱マニュアルなど)が存在し、そのGenre毎に繰り返し現れる言葉や表現、特定のパターンやルールがあります。

 

野口先生のESPとの出会いは、翻訳者として企業のアニュアルレポートの翻訳に携わった際、過去の文書の参考例や、国内・海外での他社事例を参考に「その業界でどういった言い回しをしているか」をリサーチし、社内で使えるフレーズブックや外部の翻訳者も使える専門用語集の作成に立会ったところからだそうです。
ESPはディスコース・コミュニティの環境の中で活動するために必要な言語で、翻訳はもちろん通訳を学ぶ人、ビジネスの分野で活躍する人にも重要であり、「学術的・理論的なだけでなく、実用的なアプローチ」だとおっしゃっています。

 

Genreの分析
効果的にコミュニケーションを取るためには、ディスコース・コミュニティの中にどのようなGenreがあり、それぞれにどのような特徴があるかを理解することが重要です。

 

セミナーでは、Genreの特徴を理解することが重要ということで、ひとつの例をあげて説明をしていただきました。
今回は「取引会社への販売価格改定」のビジネスレターを例に、日本語版と英語版の2種類を横に並べ、時候の挨拶、価格改定の本題、その理由にあたる部分を色分けし、順序や分量を比較しました。

honyaku_1.png


 日本語版には時候の挨拶などの“Politeness expressions”が多く、英語版は“What?” “When?”が最初に来るなど、情報の順序や情報量の点で文書の作りに大きな違いがありました。つまり、Genreの特徴を反映せず、単に機械的に翻訳するだけでは、本来の目的(この文書の場合は価格改定の了承、および取引の継続)が達成できない可能性があると考えられます。

 

Corpusの薦め
翻訳者としてGenreの特徴を理解することは重要で、その為には自分でCorpusを構築することが大切だと野口先生はアドバイスされています。Corpusとはテキストのデータベースのことです。セミナーの中で先生はAntConcというソフトを使用し、データベースの中から様々な用語の使い方を探すデモンストレーションをしてくださいました。

honyaku_2.png

 
皆さんも使い方に迷う“such as”と“like”の良く似た表現や、“however”のセンテンス内での位置などをCorpusで検索した結果も発表され、使用される分野によって使い方が異なることを実際の画面で見せていただきました。また、コロケーション(“heavy rain”などの正しい単語の結びつき)を勉強するという意味では、Corpusは翻訳者だけでなく通訳者をめざす方にもぜひ使ってもらいたいツールだとおっしゃっていました。

 

良い翻訳をするための“OCHA”
野口先生は、普段クラスで“Observe/Classify/Hypothesize/Apply”が大切だと生徒さんに言っておられるそうです。その文章が「何の目的で、誰のために書かれているのか、どういった情報がどのような順序で出てきているのか」をよく観察して翻訳し、翻訳をしたら声に出して読んでみて表現を確認することも大切だとおっしゃっていました。


日本人にとって日英翻訳はハードルが高いと思われがちですが、野口先生のお話にあったESPアプローチで、使えるものをフル活用することによりハードルが下がるのではと感じました。また英文ライティングにも活かせるESPアプローチをもっと多くの人に知ってもらえればなとも思いました。

 

えんぴつ サイマル・アカデミー大阪校 翻訳者養成コースについて

旗 これまでの「通訳者への道・翻訳者への道」セミナーはこちら

 

2016年8月27日開催 『通訳者・翻訳者への道』 アフターレポート

  • 2016.10.31 Monday
  • 14:42

サイマル・アカデミーでは、定期的にセミナー「通訳者への道」「翻訳者への道」を開催しています。こちらでは2016年8月27日(土)に開催された『翻訳者への道』についてレポートします!今回の講師はサイマル・インターナショナル登録翻訳者の桧垣さゆりさんで『17年間のブランクを経て、プロの翻訳者として社会に出るために、身に付けたこと』というテーマでお話しいただきました。

 

桧垣さん写真_web.jpg講師:桧垣さゆり(サイマル・インターナショナル翻訳者)
専業主婦として家事と育児に専念した後、2003年10月よりサイマル・アカデミー実践英語コース(現・総合英語)を受講。その後、翻訳者養成コース(産業翻訳英日基礎科・本科)を経て、2005年10月にサイマル・インターナショナルに登録。経済、経営などビジネス全般を中心に、英日翻訳と校閲を担当。

 

 

桧垣さんは「産業翻訳者」ということで、「産業=ビジネスや企業活動の流れ」になぞらえて、ご自身が翻訳者になった道筋や翻訳に必要な勉強についてお話しくださいました。

 

「フリーランスで仕事をするということは『企業を経営することのミニチュア版』のような側面がある。」というお話から、始まった今回のセミナー。企業経営において「マネジメント力=今あるリソースを使って最大限の成果を上げること」と定義したうえで、「会社勤めをしていれば、日々の仕事で身につく知識なのかもしれないが、主婦だった自分は翻訳者養成コースに入ってビジネス知識を身につけた。企業活動の考え方を知ることは翻訳のための知識ばかりでなく、自分自身が仕事をする上でも大きなヒントを得たし、ずいぶん助けられた」とおっしゃっています。

 

プロになるにはマネジメント力が必要 ―基礎研究から商品開発へ―
桧垣さんは長い主婦生活の後、翻訳者になりたいという思いからサイマル・アカデミーに入学。まず最初は英語力強化のため実践英語コース(現・総合英語)から受講を開始し、レベルの高いクラスメイトから刺激を受ける日々を送っていました。ですが、『いつまでも(実践英語コース受講を)続けていても具体的に仕事に結びつかない』と気づき、翻訳者養成コースへ移る事を決めました。

桧垣さん自身の中で「自分のマネジメント力の第1歩」と感じたのが、この翻訳者養成コースへの入学でした。
この「翻訳者養成コースへ移ろう」という決断を企業活動で例えると「基礎研究段階から商品開発の段階に移った」と桧垣さんは言います。

モノを売る以上、商品開発をしない会社はない。つまり、「翻訳者としてやっていきたいなら、翻訳の勉強(=商品開発)をしなければ、翻訳者にはなれない」ということに気づいたそうです。実践英語コース時代のクラスメイトは高い英語力を既に持っているにも関わらず、「まだまだ英語が足りない」と尻込みする方が多数だったそう。英語力が足りないから、翻訳者になれないかもしれないと、ずっと基礎研究(=英語の勉強)を続けてしまい、夢見ていたはずの翻訳に必要な商品開発(=翻訳の勉強)にいつまでたっても移らないクラスメイトがいた、というエピソードに続けて「怖がっていつまでも先に進まないのはもったいない。たとえ翻訳者になれなくても失うものは少ないのだから、リスクを取ってでも自分で決断が必要」と力強いメッセージをいただきました。

 

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産業翻訳の魅力 ―商店街から地球の裏側へ―
産業翻訳の勉強を通じて桧垣さんが感じたこと、それは「自分の身近な出来事とグローバルな世の中の動きが、実は地続きだった!」ということだったそうです。

主婦だったとき、桧垣さんにとっての世界は「家や子供の学校、商店街」など限られていました。それが、1歩外に出てみると、意識は地球の裏側まで一気に広がったと言います。「個人レベルから、会社レベル、国家レベル、世界全体と見渡すことができるようになり、仕事を通して間接的、時には直接的に関われること、そして居ながらにして広い世界や時代の最先端につながれるのが産業翻訳の魅力です。」


今回のセミナーでは、翻訳の勉強をする中で身につけた「企業活動での様々な考え方」が、産業翻訳に必要な知識としてだけでなく自分の決断やモノの考え方にとても役に立った、というお話で非常に印象的でもあり、また心にも強く響きました。翻訳者養成コースに進んだ後も、17年間主婦業に専念されてきた桧垣さんと現役ビジネスパーソンとでは、課題1つをこなすにも翻訳作業に取り掛かる前段階の内容理解から苦戦されたと言いますが、全く知らなかったビジネスの知識を時間をかけてひとつずつ調べ、身につけながら取り組むことで、入学から1年半で翻訳者登録につなげた桧垣さんの努力に、きっとセミナーに参加された多くの方は背中を押されたことと思います。
 

旗 サイマル・アカデミーの翻訳者養成コースについて

四葉のクローバー これまでの『通訳者・翻訳者への道』セミナー

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